LyXの特徴
LyXと他のワープロの違いは,次の点にあります.
- ワープロ:文字を入力し,文字サイズなどを格好良くなるように整形していく
- 整形は各ユーザーの技量に依存する.従って,出来栄えは個性的(不統一)である.内容が個性的かどうかは知性に依存して定まる.
- たくさんのユーザーが書いた文書を集積したり,一つの文書が3ページ以上になったりすると,不統一になっていく
- 実は【スタイル】統一機能もあったりするが,使わなくても文字が入力できるため,誰も使わない.スタイルを使っていない箇所を検出することも不可能.
- 数式の入力が大変.特に主なワードプロセッサーでは, 数式番号が入力できない! 馬鹿なの?式番号がない論文って,あまり見かけないんだが.
- LyX: 文字を入力し,その属性(これは章の表題,これは本文・・・)を指定する.
- 整形はお仕着せであり,誰が書いても同じような体裁の文章が出現する.100ページ1000ページでも問題は生じない.
- その整形に逆らい,(内容はともあれ,ルックスが)個性的な文章を書くには,大変な技量を要する.いや,無理ですよ.やめといたほうが
- 数式の入力が極楽
というわけですので,最初は属性を覚えるのが大変ですが,慣れれば楽チンです.まあ,年賀状を書くのは個性が出せるワープロ,技術文書は没個性のLyXということになるでしょう.
文字の入力
LyXでは,文字を入力すれば,文字を入力することができます.何も指定しなければ,本文になります.【Return】で行を変えることができますが,LyXにおいては
編集画面の改行とは,パラグラフを新しく作成せよ,という指示
ですので,どんどん改行すると,段落が全て1文という奇妙な文章になってしまいます.これを防ぐために,【LyX】【Preferences】【操作性】【表示】の【段落の終わりに印】を入れた方が良いです.編集中に,パラグラフ印を目視で確認できます.
また,日本語の句読点「,」「.」「。」では改行を行いませんので,少々微妙に見える場合があります.検索置換で,英文の句読点+スペース「, 」「. 」に変換してしまいましょう.英文スペースは「ここで改行するとかっちょいいかも」という命令ですので,文章が格好良くなります.(【挿入】【整形】【保護された空白】はダメです.これは逆で,「ここで改行したら死刑」という命令です)
LyXで入力できるのは,印刷するべき文字だけではありません.どのように印刷するかを支持する「コマンド」を入力することができます.そのコマンドは,TeXと呼ばれる,難解なソフトの命令です.必ずしも覚える必要はありませんが,覚えていると便利に使えます.これを入力するには【CMD】L キーを押すと,赤枠が出ますので,その中にコマンドを入力します.例えば \today (バックスラッシュの後ろにtoday)と入力すると,印刷する日付を入れることができます.多くのコマンドがありますが,LyXが知っているよりも多くのコマンドを覚えるには10年以上かかると思います.(TeXに慣れるには約10年かかります,と言いたいわけです)
入力中の画面は,下図のような感じになります.
辞書検索
まともな文章を書くためには,こまめに辞書を引く必要があります.辞書をアクセスする方法は,次の通り:
- スペルチェック:英文の場合,【ツール】【スペルチェック】
- 辞書:これはMacの辞書を使います.プレビュー中に,調べたい単語の上で3本クリックすると,辞書が出ます.
検索・置換
エディターでは検索置換を行うことができます.【Command】F あるいは【編集】【簡易検索】では,右の画面により,テキスト文字列の検索・置換が可能です.
【Shift】【Command】F あるいは【編集】【詳細検索】では,下の画面により,テキスト文字列だけではなく,数式あるいはその一部を検索・置換できます.検索画面における数式の入力方法は,ここで説明している本文への数式入力と同一です.
章節の表題の入力
パラグラフ毎に,その属性を指定できます.これは,下図の属性メニューから選びます
【標準】とは本文で,【節】は節の表題番号付き,【小節】はサブセクション番号付き,です.*マークは,連番がつかない章節表題です.
この属性を指定すれば,文字サイズや文字属性は自動的に設定されます.ユーザーが指定しても,無視されます.このセクション表題などのスタイルを変更するには,悪魔を召喚する必要があります.
挿入した章節の構造は,【表示】【文章構造面】で【目次】を選ぶと表示できます.この面をつかって,編集すべき章節を移動することもできます.
文字サイズなどを調整
本文のある部分の文字サイズを調整するには,入力した文字を選択して,下のボタンを押して調整します.
【大きさ】で文字の大きさを,【太さ】で文字の太さ(太字=ボールド,細字=ミディアム)を,【いろ】で色を,【フォント属】で文字の形(普通はローマン,斜めのイタリックなど)を調整できます.
なお,調整した文字の設定を解除してデフォルトに戻すには,各項目で【リセット】を適用します.
パラグラフ設定
上記の文字設定の右横が,段落設定で,段落の中央寄せ,デフォルトの両端寄せなどを選ぶことができます.
特殊文字の入力
フランス語などで,アクセント記号を入力しなければならない場合があります.これは,【挿入】【特殊文字】【記号】から選べます.
スペースの調整
【挿入】【整形】では,文章の形を整えるための空白を挿入することができます.例えば横方向の空白としては
縦方向では
ただし,LyXでは,改ページを自動化しており,改ページが入れられた場合に奇妙な空白が生じないように
- 行,頁の最初の空白命令は無視する
というルールがあります.ので,空白指示が動作しない場合があります.無視しないでちょう,というオプションが【保護】です.保護されている空白は,行や頁の戦闘においても出現します.